車載用半導体に希望はあるのか?

May 6, 2020 in Semiconductor Story by Prasad Dhond
シェアする:

Abstract image of car speeding away

最近の自動車業界は暗い見通しが多くなっています。しかしながら車載向け半導体は、半導体不況が予想される中で、最も注目される分野の一つとなっています。

各種市場調査レポートやアナリストの解説を見てみましょう。自動車市場の予測は、ますます悲観的になってきています。IHSは自動車生産台数を3度も下方修正しており、現在は2020年の台数は対前年22%減と予測しています。

自動車半導体大手が発表した第1四半期決算と第2四半期予想も落ち込んでいます。

ティア1ではDensoとAisin-Seikiが、2020年3月期の営業利益が大幅に減少したことを報告しました。Boschは2020年には自動車生産が少なくとも20%減少すると予想しており、全体の見通しを立てることは不可能としています。

欧米の自動車OEM工場は3月中旬から閉鎖しています。日本では、工場の稼働は続いているものの、トヨタ日産は需要減による操業縮小を発表しました。

それでは今後の回復の見込みはあるのでしょうか?

まず、中国のOEM工場は現在はほぼ全て稼働しています。これらの自動車工場の需要は、欧米の落ち込みを相殺しています。欧州が稼働し始め、米国のOEM工場もそれに追随しています。

中国の稼働に伴い、販売店の売上は急回復しています。

Link to Quick Rebound in Wuhan Car Sales Article

人々は公共交通機関を避けるために車を買っていました。これは、今後の自動車需要の増加にプラス要因となる可能性があります。

一部の顧客は、公共交通機関よりも自家用車の方が安全だと考えているため、危機前よりも意欲的になっています。店頭での需要はA3などの小型モデルが人気で、セカンドカーを購入する家庭もあることを示唆しています。

2008~09年のリーマンショック時には、各国の政府が、自動車販売を促進するための景気刺激策を実施しました。「Cash for Clunkers(燃費の悪い旧車を廃車にして新車に買い替えるために米政府が助成金を支給した制度)」を憶えているでしょうか?。2009年7月1日に始まり、わずか30日で10億ドルの資金を支給しました。その後、政府は24日で20億ドルを追加で支給しました。2009年に政府が支給した 30億ドルは、ほぼ 140億ドルの自動車購入をもたらしました。他の国にも似たような廃車プログラムがありました。

今後、再び世界各地で自動車の景気刺激策が開始される見込みです。このようなプログラムは、すでに世界中で増加しています。

米国では:

Link to Ford expects talks with US on cash for clunkers like stimulus Article

中国では:Link to Hard hit china industry asks government incentives article

そしてドイツでは:

Link to german automakers ready scrapping proposals article

自動車産業は米国のGDPの3~3.5%を占めています。自動車製造業は90万人を雇用し、自動車関連産業の米国の雇用は1000万から1400万人にも及びます。自動車メーカーやサプライヤーは全国に散在していますが、特にミシガン州, オハイオ州, イリノイ州, インディアナ州に集中しています。

米国経済における自動車産業の重要性を考えると、刺激策は今年秋から2021年初頭までに行われる可能性が高いです。モルガン・スタンレーによると、現在道路を走っている平均的な車は12年前のもので、買い替えの需要があります。100億ドル規模の景気刺激策があれば自動車の売上向上が予測されます。これまでの景気刺激策の焦点はガソリン燃費でしたが、今回の景気刺激策では、車載向け半導体の後押しとなる安全機能のインセンティブも付与されそうです。

しかし、それ以上に重要なのは、自動車1台あたりの車載製品用半導体の搭載金額の増加が続くことです。下のグラフは、平均的な車の1台あたりの半導体の搭載金額とテスラのモデル3の比較を示しています。平均的な車の半導体の搭載金額は400ドルまでです。一方、電気パワートレインは、600ドル近くの半導体を必要とし、レベル2 ADASになるとさらに650ドル増加します。今の道を走っているほとんどの車は、電気でもなく、レベル2のADASでもありません。そのため、車載向け半導体の増加は今後長期間にわたって見込めます。

ADASの機能は便利で、使い始めたら不可欠となるものもあります(たとえばバックアップカメラやブラインドスポット検出などが挙げられます)。さらに、これらの機能は各国の規制によって義務付けられたり、インセンティブが与えられたりもしています。ADAS機能の取り付け率も今後は増加が続くことが見込まれます。

自動車業界は直近はひどい状況に陥るでしょう。しかし、COVID-19の混乱が落ち着けば、カーエレクトロニクスの需要は大きく戻ってくるでしょう。2001年の車載向け半導体の市場はわずか100億ドルでした。2019年には4倍の410億ドルに成長しました。2009年には金融危機の影響で一時休止したものの、2010年には再び上昇基調に転じました。

過去の実績は将来の実績を保証するものではありませんが、10年後には車載向け半導体がもっと大きくなっていることは間違いありません。ADAS、インフォテインメント、電化は、車載向け半導体市場の成長を確実にする自動車の電子コンテンツの増加を推進しています。車載製品用半導体には確かな成長性があります。

免責事項:このブログ記事に記載されているすべての意見は、あくまでも私自身の筆責です。

著者:

Prasad Dhond
車載製品担当 VP and General Manager
Amkor Technology, Inc.

2014年Amkor入社、Amkorの自動車市場セグメントVPを務める。QuadとDual Leadframeの製品ラインを管理を経験。Amkor入社前、12年間Texas Instrumentsに勤務、アナログ製品グループでプロダクトおよびマーケティングを担当。テキサス大学オースティン校BSEE学位、サザン・メソジスト大学MBA取得。