車載製品用チップの不足:組立の視点から

2021年6月10日 半導体ストーリー プレゼン/Prasad Dhond
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2020年3月以降、パンデミックの影響で、トイレットペーパーや小麦粉、運動器具などの変わり種商品が品薄になっています。直近の犠牲者は自動車産業で、世界中の自動車生産がチップの不足によって困難に直面しています。チップ不足の原因として、半導体サプライヤー、ファウンドリ、ウェハーファブ装置、火災、吹雪など多くが取り上げられていますが、IC組立サプライチェーンのいくつかのコンポーネントにも目を向ける必要があります。

組立装置

2020年第1四半期、自動車市場の予測は悲惨なものとなり、自動車メーカーは直ちにチップの発注を縮小しました。わたしは去年本件を投稿しましたが、幸いなことに、「在宅勤務」をきっかけに、サーバーやクラウド、コンピューター用ICなどの需要が急増し、半導体の製造能力はこれらの成長分野に再配分されました。

Amkor Chip Shortage Assembly Figure 1

2020年後半に自動車市場が回復し始めると、自動車サプライヤーは生産能力を取り戻すために奔走しましたが、困難を極めることになります。大部分の車載製品用ICは SOIC、 TSSOP、 QFN、 QFP、 BGA および パワーディスクリートなどのワイヤーボンドパッケージを使用します。

Amkor Chip Shortage Assembly Figure 2

Yoleのレポートによると、ワイヤーボンドパッケージは、車載製品パッケージ市場の90%以上を占めています。

Amkor Chip Shortage Assembly Figure 3

すべてのICは、ウェハを個別のチップへダイシングするために、ウェハソーやレーザーグルーバーを使用します。ワイヤーボンドICには、単層のチップをリードフレームに接着するか、サブストレートをラミネートするためにダイボンダーが必要です。その後、ワイヤーボンダーを使って、金や銅のワイヤーでチップとパッケージのリードを接続します。

Amkor Chip Shortage Assembly Figure 3

ワイヤーボンダーのサプライヤーであるKulicke and Soffa(K&S)のCFOが、第1四半期の決算説明会で語った言葉からもわかるように、ワイヤーボンダーのリードタイムは大幅に延長されています:「現在、リードタイムは大幅に長くなりました。40週ほどに及ぶと思われます。」K&S最高財務責任者兼上級副社長のLester Wongはそう語りました。

皮肉なことに、マイクロコントローラ不足でK&Sのボンダーが遅れているが、おそらくその多くはK&Sのワイヤーボンダーを使って組み立てられているものでしょう。マイクロコントローラを必要とするKulicke and Soffa Industries Inc.のパッケージング装置の平均納期は、倍の6か月となっています。

ウェハソー、レーザーグルーバー、ダイボンダー、モールド装置などその他の組立装置も、需要の増加に伴いリードタイムが長くなっています。装置メーカーはそれに対応しようとしていますが、この装置不足がIC組立能力の増強をさらに遅らせています。

材料の不足

Amkor Chip Shortage Assembly Figure 5

また、生産能力に余裕があっても、ICサブストレートやリードフレームなどの重要コンポーネントでの材料が不足している場合もあります。データセンターやクラウドコンピューティングに使用されるチップの需要が高いことから、以前からサブストレート不足が問題となっていました。サブストレートのサプライヤーがこれらのアプリケーションに生産能力を振り向けることで、フリップチップICやワイヤーボンドICを使用している車載製品のお客様への供給が制約されています。

これらの材料のために新たな生産能力を引き出すことが難題となっています。サブストレートやリードフレームのサプライヤーは利益率が低いため、大規模な生産能力の導入には慎重になっています。最終結果として、サブストレートやリードフレームのリードタイムが長くなり、価格も上昇しました。

Amkor Chip Shortage Assembly Figure 6

サマリー

半導体の製造能力は、2020年にパンデミックが発生した際に、車載製品用からコンピューティング用、サーバー用へと再配分されました。自動車の需要は2020年第3四半期に回復し始めましたが、この生産能力を取り戻すことは困難でした。パッケージングの視点からは、車載用ICは主にワイヤーボンドパッケージを使用します。ワイヤーボンダーなどの組立装置が不足していました。また、材料の不足により、サプライチェーンの遅延も発生しています。サブストレートやリードフレームの材料サプライヤーは利益率が低いため、半導体メーカーに比べて投資は慎重に行わなければなりません。これらの要因により、車載製品用チップの不足が続いています。

著者

Prasad Dhondは2014年にAmkorに入社し、現在はAmkorのワイヤーボンドBGA、Vice Presidentです。以前は車載製品の市場セグメントのリーダーとして、クワッドおよびデュアルリードフレーム製品ラインを管理していました。Amkor入社前、Prasadは12年間Texas Instrumentsに勤務し、アナログ製品グループでプロダクトデフィニションとマーケティングを担当していました。彼はテキサス大学オースティン校でBSEE学位を、サザン・メソジスト大学でMBAを取得しています。